Eve宇宙の大部分を占めるヌルセキュリティ宙域は、宙域を領有する勢力に多くの利権を与える。
ヌルセキュリティ勢力は戦争資金のために領土を維持し、そして領土を手に入れるために戦争をする……
我らカラドリウスアライアンスも、そんなヌルセキュリティ勢力の一つである。
Eve Onlineにおいてシステム上存在する勢力単位は、まずコープ(※corporation。会社)。わかりやすく他ゲームの用語に言い換えるならギルドである。
コープが複数集まって結成する連合体がアライアンスとなる。カラドリウスアライアンスはその名の通り、アライアンスである。
そしてゲームシステム上はアライアンスの上位の集まりは存在しないが、システム的な連携を超えたアライアンス間の同盟関係を組むのが当たり前になっている。これをコアリションと言う。
カラドリウスはDEAD Coalitionというコアリションに参加していた。
改名前のGuardians of the Galaxy時代を含めれば、このコアリションは四年ほどにわたって宇宙北部を領有し続けていた。
しかし昨夏、領土を隣り合うコアリションであるPanfamに対してDEAD Co.は侵略。これに対するPanfamの反撃は宇宙全土から数多の助勢を得た徹底的なものとなり、奪われた領土の奪還のみならずDEAD Co.の領土にも及んだ。
約半年間に渡って続いた戦争にDEAD Co.は敗北し、解散した。
DEAD Co.のメンバーであるカラドリウスにとってもこれは大きな転機となった。
カラドリウスはDEAD Co.の一員としてPanfam(あるいはPanfam + Winter CoalitionでPandafamとも)と戦い、戦線を押し込まれたDEAD Co.のBranch地域放棄に際してDEAD Co.を脱退。その後、Pandafamと交渉して停戦。Pandafamの一部であるWinter Co.に加盟する運びとなった。
此度の戦争に関してアライアンスとして振り返る記事を出すに当たってなんか知らないけれど私がインタビューする形式で行くことになったので、不肖私Suzume LaurantがアライアンスCEO(※1a)であるDexsar氏とメインFC(※1b)のneplus氏にお話を伺った。
(※1a)アライアンスCEO:つまりアライアンスのリーダー。
(※1b)FC:フリートコマンダー。艦隊戦における指揮官。
――本日はよろしくお願いします。
Dexsar「よろしくー」
neplus「よろしくお願いします」
――早速始めましょうか。まず、PanfamのTenal侵攻はいつ頃察知しました?
neplus「私はブラックアウト(※2a)中だったかな。NC.の『あいつら許さねえ攻め込むぞ』っていうpost(※2b)を見て。事前に察知してるみたいのはなかったかな」
Dexsar「俺は全然覚えてないな……Sort(※2c)から連絡あったかも知れない。でも一月前とかから知ってるなんてことはなくて。NC.(※2d)とかPL(※2e)の動きって察知しづらいんだよね。スパイ入れてても、特にPLはキャンペーン毎にFCが変わって、そのFCに権限があるところなんで」
Dexsar「発端はRR(※2f)がコアリションに相談無くCombat Wombat(※2g)を仲間に引き入れちゃったことで、Cobalt Edge(※2h)の入り口の辺りをあげる約束しちゃったんだよね。それでうちは(ブラックアウト中にTenalをRRの領土として奪いつつ)Cobalt Edgeまで攻め込んだけど、Panfamはそこを取り返す勢いでTenalまで攻めてきた感じ」
(※2a)ブラックアウト:ヌルセク全域でローカルチャットにキャラクターリストが表示されなくなった長期イベント。ヌルセクでの様々な活動が停止した
(※2b)post:この場合はDiscordなどでの全体告知。つまりスパイが持ってきた敵の内部告知文章という意味。
(※2c)Sort:DEAD Co.の中核アライアンスであるDARKNESS.のCEOで、コアリションCEOでもあったSort Dragon氏
(※2d)NC.:Northern Coalition.。Panfamの一員で、今回の戦争でDEAD領に侵攻した。名前にドットを付け忘れると怒る。
(※2e)PL:Pandemic Legion。 Panfamの一員で、今回の戦争でDEAD領に侵攻した。
(※2f)RR:Ranger Regiment。DEADに加盟していた中華系アライアンス。人数の上ではDEAD最大勢力だった。
(※2g)Combat Wombat:仲間だったかも知れないアライアンス。戦争開始直後の時点で既にほぼ活動停止していた。
(※2h)Cobalt Edge:Branchから見るとTenalの向こう側に位置するリージョン。Panfamの本拠地の玄関口に当たる。
―― その時のコアリションとしての分析は?
Dexsar「押し返せると思ってた。『大丈夫でしょ』と」
neplus「(コアリションの)FCチームとしては特に分析してなかった」
Dexsar「まあ別にそこまで楽観視はしてなかったよ。うちのジャンプゲート(※3a)が撃たれたすぐ後くらいにINIT(※3b)呼ぶ話をSortとしてたし」
(※3a)ジャンプゲート:プレイヤーが領土内に設置できるショートカットゲート。もちろん破壊可能。
(※3b)INIT:アライアンス『The Initiative.』と系列勢力。 Goonswarm Federation を中心とするEve Onlineの最大勢力・Imperiumに所属する。つまりINITを呼ぶというのは、独力では防ぎきれないであろうPanfamの攻撃に対抗するためDEADがImperiumに助力を願ったということ。
――Dexさんやnepさんとしての分析はどうでした?
Dexsar「うーん……戦争がどうなるかなんて何戦かやってみないと分かんないからな」
neplus「SF-XJSシステムを落とさず一ヶ月くらいやれれば何とかなると思ってたけど、橋頭堡を作られたら厳しくなるだろうなと。そうなったら勝ち目が無いので和平して、元の領土を返して手打ちにすべきだと私は思ってました」
Dexsar「それ(SF-を徹底防衛する方針)だとSF-をCombat Wombatに持たせてた時点でダメだった説あるな」
―― 私としては最初の頃「思ったより良い勝負ができてる」という印象でしたが 。
Dexsar「最初の3,4回だよね」
neplus「10/2のSZ6での戦いでは NC.に対してキャピタル(※5a)ファイトで勝ってしまった。この戦いはカラドリが輝いたんですよ。NC.がスパイ入れてDN(※5b)をカウントしてたんだけど、それよりちょっと多くのDNとCV(※5c)を投入するってことになってて。さらにカラドリのDNは全部別の場所に待機させておいてNC.の計算を狂わせた。NC.はDNを逐次投入したけど、終始数で負けてました」
neplus「サイノの変更(※5d)後、宇宙で最初のキャピタルファイトだったかな。お互いに模索期だったけどDEADが優位に立てた」
Dexsar「逆に言うとNC.はこの敗戦で修正してきたんだろうな。それでsuper(※5e)も持ってきたんだろうし」
(※5a)キャピタル:ある程度離れた宙域にジャンプ可能なジャンプドライブを備えた大型艦。強力だが、必要なスキルも値段も高い。
(※5b)DN:ドレッドノート。日本語クライアントでは『攻城艦』と訳される。対キャピタル・対建造物でとにかく大ダメージを叩き出すキャピタル艦。
(※5c)CV:空母。対サブキャピタルの艦載機攻撃や、相手の艦載機を撃ち落とす制宙戦闘が主な役目。
(※5d)サイノの変更:キャピタル艦をジャンプさせるためにはジャンプ先でサイノを使用しなければならないが、どんな船でも使えたサイノが特定の艦種でしか使えなくなるという大きな変更があった。これによってサイノを出す側にとっては事前の備えが必要となり、相手側にとっては予測と対応の余地が生まれた。
(※5e)super:スーパーキャピタル。タイタンとスーパーキャリアのこと。キャピタルの数倍~数十倍のお値段を誇る超強力な船。
―― 最初、Panfamのステージング (※6a) はSF-でしたけど、NCGを落としたら一気にそこへ進出してきましたよね 。
neplus「彼らのストラクチャはまず壊せない(※6b)ので、それが大きなアドバンテージだった。だからドンドン前に来られた」
Dexsar「タイマーがUSTZ(※6c)だから手も足も出ない状態が続いてて……USTZはImperium頼りで、押し切れなかった」
neplus「DEADはUS,EUのTZがポンコツ過ぎたな」
Dexsar「全部切っちゃった(※6d)からな」
Dexsar「NCG取られた時点で……いや、EOYを取り返せなかった時点でダメだと思った」
Dexsar「最初コアリションはSF-のコンステ(※6e)までは渡していい、どうせキャピタルが届かなくて防衛できないからって、そこで止めるという考えだった」
neplus「そこはコアリションって言うよりDARKNESS.の考えかな。私はSF-に入れたくなくて、シベリアン(※6f)もRRも同じ考えでしたから」
Dexsar「コアリションとして緊急時のプロトコル決めてなかったのは問題だよね。どこに敵が来たらどこで止めるっていうのが決まってなかったしシミュレーションもしてなかった。後手後手で、来たら対応という感じだった」
(※6a)ステージング:戦闘艦を置いてある出撃拠点。
(※6b)ストラクチャ:建造物のこと。
(※6b) 彼らのストラクチャはまず壊せない :極めて大雑把に説明すると、建造物のシールドはいつでも削れるがアーマーと本体は防衛側が設定した時間にしか壊せない。なので防衛側のプレイヤーが多く参加できる有利な時間帯に戦うことが多い。
(※6c)TZ:タイムゾーン。時間帯のこと。もしくはその時間帯に活動するプレイヤーのこと。日本などはEve内ではAUTZ(オーストラリアタイムゾーン・日本時間20~24時くらい)に分類される。US,EUは読んで字の如く。「タイマーがUSTZ」とは、アメリカ勢が活発な時間帯にストラクチャ攻撃可能時間が来るよう設定されているという事。
(※6d)全部切っちゃった:以前はその時間帯に活動するアライアンスもDEADに所属していたがsort氏との仲違いなどにより脱退している。
(※6e)コンステ:コンステレーション。7,8程度のソーラーシステムを合わせた小地域のこと。「SF-のコンステ」とはSF-XJSを含むTenal右上の団子状の集まりのこと。
(※6f)シベリアン:Siberian Squads。DEADに加盟していたロシア系アライアンス。この戦争でコアリションのメインFCだったHanzo Viper氏が所属。
―― うちの領土もかなりエントーシス (※7a) 受けましたね 。幸いにも全て守り切りましたが。
neplus「うちはエントーシス防衛強いからね。あとうちの領土は本気で落としに来てなかったし」
Dexsar「裏でやってる戦闘を有利にするため、戦力を惹き付けるためのエントーシスだから。でもうちはALT(※7b)多い人多いし、あんまり戦力減らさないで守れた」
Dexsar「でも(Panfamにとっては)やらないより良い。戦争はそういう事の積み重ねだから。そういうのちゃんとやれるかどうかだから」
(※7a)エントーシス:この場合は領土の所有権を奪う攻撃のこと。
(※7b)ALT:複アカで操作する別キャラのこと。
―― あと、こっちが迎撃できない平日昼前(日本時間)とかにスーパーキャピタル艦隊でストラクチャ撃ちに来るのとか絶望感ありました 。
neplus「私としては『毎日ご苦労様です』と(笑)。アーマータイマー(※8a)を守れればいいわけなので。それはAUTZですし」
(※8a)アーマータイマー:シールド全損後に予約されるアーマー攻撃可能時間。これを守り切ればシールドまで全回復し防衛側の勝利となる。
―― Tenalに近い場所をステージングにして、スーパーキャピタルも全部あそこに置いてた頃は鉄壁感ありましたね 。
neplus「5-Pだっけ? 防衛する気なら前に出すのは当然なので、テナルの広い範囲をカバーできる(※9a)5-Pは妥当だと思った。鉄壁というか、防衛する気ならこれくらいはすべき。可能ならもう少し早く来ていれば……」
Dexsar「EOYとかにキープスター(※9b)とかあったら戦況ももっと違ったのにな」
neplus「ZH3ので充分じゃないですか?」
(※9a)カバーできる:キャピタル艦はジャンプ範囲が決まっているので、ステージングから一定範囲はかなり守りやすい。
(※9b)キープスター:スーパーキャピタルも入港可能な超大型要塞。スーパーキャピタルの運用に必須であるため、周辺地域の防衛能力に関わってくる重要拠点。信じられないほど高価。
―― この頃は割と拮抗していたと思うんですが、コアリションとして戦争をどう終わらせるかみたいな見通しはあったんですか?
Dexsar「無かったと思う……」
neplus「無いよね!?」
Dexsar「そもそも向こうがどこまで攻める気なのか次第だから相手次第だった。守り切るか負けるか」
neplus「(戦争を終わらせる方策として言うなら)敵へのハラス(※10a)は少なかった」
Dexsar「遅滞攻撃はもっとすべきだったかな」
neplus「戦いを終わらせる道があったとしたら一つが土下座。土下座して領土を返す」
Dexsar「(笑)」
neplus「もしくはINITがsuper持って来ていた時に2週間くらい掛けて一気に攻勢を掛けてTenalから叩き出すとか」
Dexsar「それは一応考えてはいたけどSortが言うには『それをやっても結局Goonが居なくなったらまた(敵が戻って)来るだろ』ってGoonが主張したとかで、実現しなかった」
neplus「あとNC.がキャピタルを出さなくなってINITが帰ったからね。キャピタルファイトがしたくて来たINITにコンテンツを与えないことをNC.は徹底して、それで(INITはつまらなくなって)帰っちゃった」
(※10a)ハラス:ハラスメント。戦争中、敵方を疲弊させるためにゲリラ的に仕掛ける小規模な攻撃。
――アライアンスとしての戦略はどうでした?
Dexsar「Branch守らなきゃダメというのが俺の考え方だった。Branch放棄が決まった時点でDEADに居るの無理だなと。自分の所の領土あってこそだから」
neplus「DARKNESS.の某FCが『この戦争はマラソンだ』って言ってたんだけど、この戦争がマラソンならアライアンスメンバー向けに金策環境を整えないとなと、カラドリウスとしてはそれをやってた」
Dexsar「マラソンってか(理想は)リレーでしょ。どこかが突出して相手を疲弊させて、休んでる間に他が……みたいにやるべきだった。みんな一斉に余力を残そうとしたからなあ」
neplus「そもそもうち以外皆、ハラスやる気無かったし。それなら金策してキャピタル増やした方がいいなと」
―― TEST (※12a) が参戦してかなり苦しくなったな、という印象でしたが 。
Dexsar「確かに厳しかった。二正面になったし。二正面は何回か経験してるけど負けパターン」
neplus「(TESTの遠征軍の)戦力そのものはそこそこだったけど、TESTへの対応でステージングを下げた(※12b)のが一番痛かった」
(※12a)TEST:Test Alliance Please Ignore。reddit発祥の巨大アライアンス。Legacyコアリションを率いる。戦争中盤でDEADの敵として参戦し、Deklein側に陣取ってDEADをPanfamと挟み撃ちにした。
(※12b)ステージングを下げた:Tenalに睨みを利かせるためTenal寄りの位置に展開していたがTEST参戦後はTenalとDekleinの両方にアクセスしやすい位置にステージングを変更した。これによってDekleinでの戦闘に対応しやすくなった反面、Tenalへ攻撃を受けても即応しにくくなった。
―― ただ、私としては最初、TESTは遊びに来てる感もあったんですよね。領土戦やるよりも適当にストラクチャ壊しに来たり、Tenalでの戦闘にはそうそう出てこなかったり。
Dexsar「ん? 遊びに来たんだよ(笑)。参戦の理由も超適当だったし。結局今、戦える相手がみんなDEADの他に無かったんだよ。TESTはWinter(※13a)との戦争が終わって暇になっちゃったとこだったから」
(※13a) Winter : Winter Coalition。Fraternity. を中心とする、このインタビューを行っている時点でカラドリウスが加盟しているコアリション。
―― 私はFRT (※14a) が参戦した辺りで「いよいよアカン」と思いましたが 。
Dexsar「『FRTに裏切られた』つってSortすげえ怒ってたけど、(DEADと離れてる)FRTの位置とか(一体化・従属化が進んでる)NC.との関係性見たらBlue切られる(※14b)のは時間の問題だっただろと」
neplus「(FRTが参戦して)『ああもうAUTZでも勝てないだろうな』と思った」
Dexsar「あの頃、既に押され気味感はあったけど。ダメ押しだったよね」
neplus「皆参戦しちゃったよね。PLも(サボらないで)ちゃんと来るようになったし、Siege Green.(※14c)も遊びに来たし」
(※14a)FRT:Fraternity.。パンダマークの中華系アライアンス。戦争終盤にPanfamの援軍として参戦。DEADにとっては味方領土やストラクチャのタイマーが設定されているAUTZの戦闘で出てくる敵の数が一気に増えたため脅威となった。
(※14b)Blueを切る:スタンディング(つまり敵味方識別)を良好に設定すると、それを示すブルーのアイコンがキャラクターリスト上で表示される。勢力間でBlueが付くことのニュアンスは様々だが、「同じコアリションを組む仲間」「戦争になったらお互い協力する関係」「近所同士、日常の戦闘行為を行わない約束をして安全な環境を確保する」等。
Blueを切るというのはスタンディングを変更し、「お互いを撃たない」関係を撤回すること。DEADはFRTとBlue同士だったためFRTはこの戦争に対して当初静観を貫いていたが、後にスタンディングをリセットして敵として参戦した。
(※14c)Siege Green.:韓国系プレイヤー中心のアライアンス。日系勢力であるNACHOも参加している。今回の戦争ではPanfamの援軍として参戦。
―― ZH3のiHubが落とされた所で『もう無条件降伏かな』と私は思いました 。
Dexsar「DEADとしては抗戦するつもりだったけどね。DekleinとBranchセットで守るって話だったんだけど、Sortからオプション(※とりうる作戦)として『Branch捨てるのもアリかも』って言われて……それが一週間したら『Branch捨てます』になったから俺は『え?』って(笑)」
Dexsar「SortはDekleinとBranchの間で防衛ラインを作るという話をしていて、(コアリション内では)みんなそれは無理だろと言ってた。この頃はDekleinでも良い戦いできてなかったし」
―― コアリションとしては、この辺りで外交的に終戦する努力などはあったのでしょうか?
Dexsar「全くなかった。終戦の絵は描けてなかったと思う」
neplus「NC.PLはそんな厳しいこと求めてなくて、土下座してTenal全部渡せば終わったんじゃないかなと思うけど、でもSortは謝らないだろうなと」
Dexsar「RRが先に謝っちゃえば良かった説もあるけどね」
neplus「RRからすれば領土返すのは簡単だったんでは? でもNC.はsortに謝らせたかったんだろうなと」
Dexsar「結局誰が先に謝るかじゃん(笑)」
neplus「もうふたりして謝って来いよと(笑)」
―― 夜逃げの準備を始めたのもこの辺りでしたね 。
Dexsar「うちはBranch来て以来ずっと領土が安定してたから夜逃げに慣れてない人多いけど、昔のシステムだと3ヶ月に一回領土変わったりしたり長くても半年とか一年? ヌルに居る限りこれは慣れろと。タイタンあると引っ越し楽だぞ」
neplus「ZH3落ちた時点でうちのストラクチャは全部落とされるなと思った。早いか遅いかは努力次第だけど、キープスターもソティヨ(※17a)も落ちるなと。逃げる準備はしないとって」
Dexsar「T-Qに進出されちゃったでしょ? そこやられるとうちは分断されちゃうし、敵もそれを狙ってたと思う。ブランチ北側は攻めるより孤立させようとしてた。そうすればもう何もできないし、あそこ」
neplus「そう言う意味ではうちの領土襲われるのはすぐじゃないだろうと思ってたけど」
Dexsar「と思ってたらいきなりキープスター撃ってきたからな(笑)」
neplus「Branch捨てるって決めちゃったもん、そりゃ(守りに来ないんだから)撃つよ!」
Dexsar「遅滞攻撃とかはすべきだったよな、やっぱ」
(※17a)ソティヨ:超大型生産設備。スーパーキャピタルだって建造できる。キープスターには遠く及ばないが高価。
―― この辺りでコアリション内で戦略について意見が分かれたわけですが、どちらの方がどのような主張でしたか?
Dexsar「うちらの主張は『Branch/Tenalワンセット』か『Deklein/Fadeワンセット』での防衛(だったけどDekleinオンリーでの防衛になった)」
neplus「結果論的にはRRとしてもBranch/Tenal捨てるのは無かったと思う。シベリアンもBranch捨てるのはほぼ資産(領土内の建造物)を捨てることになるので、本気でDekleinに退きたがってたのはDARKNESS.とImperium」
Dexsar「Dekにあったシベリアン領は防衛のために領土持たされてただけで使ってたわけじゃないから。Hanzoと話したことあるんだけど否定はしなかった。まあ代わりに月を貰ってはいるわけだけど。Iron CrownとRRは普通にDekの領土使ってたかな」
neplus「でもそれは向こうに住んでるRR勢だから。RR指導部はみんなBranch/Tenal側の人だから(Dekleinへの退却を)受け容れられる感じではなかったかな」
(※18a)Iron Crown:戦争中にDEADに加盟したアライアンス。加盟後はDekleinリージョンに住んでいた。
――その後、Pandafamとの交渉が始まるわけですが、どのような見通しでした?
Dexsar「(交渉が上手く行かない場合を考えて)常にプランBみたいのは用意してた」
neplus「でも戦略的に言ってPandafamとして拒否するメリットは無いからね。拒否するならカラドリ領を平らにするクソ面倒な作業が待ってる。うちは全力で抵抗するし、金銭的にも得るものが無い。でもうちを呑み込むなら建物とか領土とかそのまま使えるし」
Dexsar「ストラクチャ全部潰して建て替えるっていくら掛かるんだよと。結構な金額と、(その作業で)抵抗されて沈んだ船のSRP(※19a)も飛ぶし」
Dexsar「あともう一つだけど、うちはN3(※19b)のメンバーだったし今は2GTHRとかSLYCE(※19c)も向こう(Pandafam)行ってるから伝手はあった。1月中頃に『スタンディングリセットすることになったけどゴメンネ』って2GTHRから言われたり、敵同士なんだけど向こうの知り合いに心配されたりとかしてた(笑)」
neplus「向こうとしても『カラドリマジクソだわ』みたいなのは無かったから」
(※19a)SRP:CTAなどで招集しての戦闘で船が沈んだ場合、再配備のための費用をアライアンスやコアリションが立て替えること。個々の戦闘員に負担が無いよう、基本的にどの勢力でも行われている。
(※19b)N3:かつてカラドリウスが所属していたコアリション。現在は存在していないがPandafamに連なる部分が大きい。
(※19c)2GTHRとかSLYCE:Blades of GrassとSolyaris Chtonium。DEADの前身であるGotGにカラドリウスと共に所属していたアライアンス。戦争が始まるよりかなり前に脱退している。
――現状以外にあり得たシナリオは。
neplus「あらゆる可能性はあった」
Dexsar「Dekleinに行くとか、Imperiumにつくとか……」
Dexsar「ただPandafamとは直で話ができたのでスピード感違った。Imperiumと交渉するにはSortを介さなければならなかったんで……どうしても遅くなるし、Sortの主観も入るから。判断の材料が揃わなかった。こういうときはスピード」
――Pandafam側は交渉に際してどのような雰囲気でした?
Dexsar「基本的に友好的だよ彼らは。うちのことよく知ってるしね」
―― Pandafamとしてカラドリウスに期待しているのは何でしょうね 。
neplus「戦力しかないんじゃないの、そんなの(笑)」
Dexsar「そりゃヌルのコアリションである以上ね」
neplus「向こうのFCとか使わなくても独立別働隊になるし」
Dexsar「DEADの時と同じだよ。うちはそんな数出ないし、そうなると少数で相手の大きいのを攪乱するようなフリートを出して欲しいってことになる。あとNC.PL相手にやったように、見えない、ハッキリしない、ワケの分からないアライアンスなので計算ミスらせるために使うとか」
―― コアリションはカラドリウスが抜けた後、Dekleinでの戦闘で敗北して解散しましたが 。
neplus「戦闘というか戦略で負けたかな……Branch撤退を決めてうちと中華系が抜けた時点で1/3とか1/4になったのでは。そうなるとlogi(※23a)も機能しなくなる」
Dexsar「今回の戦争でDEAD無くなるだろうなとは(もっと早くから)思ってた」
(※23a)logi:ロジスティクス。艦隊の回復役のこと。カラドリウスはlogi役を出せる人の比率がコアリション内でも高かった。
――中核アライアンスのDARKNESS.を除けば、最終的にはシベリアンだけが残った形でしたが。
Dexsar「(戦った期間の違いは)誤差範囲だと思うよ。シベリアンだってFRTにキープスター以外のストラクチャとか月売ってたし」
neplus「Branch撤退の辺りでみんな善後策を考え始めたから」
Dexsar「そう言う意味ではみんな最後まで戦ったと思うけどね。コアリションは利害関係が一致しなくなれば基本ディスバンド(※解散)だし」
――ぶっちゃけ脱退時に旧DEAD首脳陣と喧嘩しませんでした?
Dexsar「喧嘩のしようが無いんだけどね。結局コアリションなんてコアリションだから。『抜けるわ』『なんで?』『こういう理由です』『そうか、じゃあしょうがないね』みたいな」
Dexsar「今回あれだと思うよ、みんな、特にBranch側のメンバーはもう駄目なの半分分かって付き合ってたから、『(抜けるのも)しょうがないよね』って」
neplus「どうだろう、少なくともDARKNESS.以外からはある程度理解は得られていたと思う。ほとんどのアライアンスとはそういう感じで話をしました」
―― この戦争を経て、宇宙はどのような形になっていくんでしょうか 。
Dexsar「Sortは『西(※Imperium)か東(※それ以外)か』になるだろと言ってた。でもTESTが半端な位置だから(Imperium/Legacy/Pandafamの)三国志。DEADは最後の小勢力集合体だった」
Dexsar「三大勢力で宇宙の3/4取ってて、第四勢力は多分もうでてこない。地理的にバラバラだから三国志に集約される」
Dexsar「Imperiumは小さい集まりを許さず集約する体制なのでDEADみたいな集まり方はさせない。対してNC.PLは『勝手にやる人達』が多いので寄せ集めて形を作るのが昔からの伝統。中間がLegacy。どっちかって言うと一つに集めるのが好きだけど。うちはそう言う意味でPandafamを選んだのは、アライアンスとして残れるのが分かってたからというのもある」
neplus「大体言われちゃった(笑)。今後は小勢力でもどこかの影響下になるんじゃ無いですかね」
Dexsar「基本、地域で三国志に分かれていく。後は(独立した)小さい海賊系勢力がうろついてる地域が出来る」
―― 戦争を通してですが、戦略的な部分は置いておいて、個々の戦闘で感じたことは何かありますか?
neplus「T1(※27a)で戦うのが流行ってるなーと。とにかく昔は高い船で戦う時代だったけど。vvvのドミニックスフリート(※27b)は衝撃的だった」
Dexsar「Imperiumはタイフーン使ってるしな」
neplus「アレ微妙じゃないですか?」
Dexsar「向こう(※Imperium)は数を出せるのが前提なので」
neplus「数任せのフリートが増えちゃってるかな。私はちょっと残念」
Dexsar「敷居が下がっていいんじゃない」
neplus「FC的に見るとHanzo Viper(※シベリアンのメインFC)がDEADの最高の資産だったと思う。彼がいなければ二ヶ月くらい早く戦争終わってた。本当に優秀だった」
neplus「でも時代は数、っていう」
Dexsar「数頼みなのはしょうがない。GoonとかTESTとか巨大勢力が出来ちゃった以上、ゲームシステム的にそうなるのは仕方ない」
neplus「個人的にサイノの仕様変更がすごく面白かったと思う。誰でもサイノ焚いてドーン! ができなくなって、相手も動きを察知して対策できるようになった」
(※27a)T1:Tier 1。特殊な能力を持たない基本的な船。鉱石だけで作れて比較的安価。乗船に必要なスキルも安い。
(※27b)vvvのドミニックスフリート:Panfamの一員であるアライアンスのVeni Vidi Viciは、戦争中によくT1戦艦のドミニックスを使っていた。そこまで強力なわけではないが、それなりの戦力になりつつ、いくら死んでも大してお財布が傷まない格安装備だった。
――戦争中、アライアンスとしてこれをやりたかったという反省点はありますか?
Dexsar「ドレッドボム(※28a)とか? 勝とうが負けようが相手にしっかり打撃与えることをもっとやりたかったよね。コアリションで全然話通らなくて……うちのアライアンス単独でも投入すれば良かったかな」
neplus「それはそこそこやれたと思ってます。DNの集中投入も、別働隊でのフリート戦もできたから、やれなかったなと思うことはあんまり無いです」
Dexsar「やってるときに俺がいなかっただけか(笑)」
neplus「時間も有限ですしCTA(※28b)もいろいろあったので、あんまり追加でこれ以上やるのは難しかったかなと。……強いて言うならローミング(※28c)かな。もっとローミングしたかった」
(※28a)ドレッドボム:DNをぶち込むこと。
(※28b)CTA:作戦行動のための軍事招集。
(※28c)ローミング:戦闘艦に乗り、獲物を探してぶらつくこと。主に小規模フリート。
――他に何か語りたいことは?
neplus「何がいけなかったか……」
Dexsar「対応決めてなかったことじゃない。個々で思ってることはあっても上層部でそれを議論せず、Sortに任せてた」
neplus「昔は英語圏がDEADメンバーの半数占めてたからそこで決まっても問題無かったけど、英語圏少数派になってディスコミュニケーションが起きた」
Dexsar「2GTHRとかSLYCEが(脱退して)離れていった後、Branch側のメンバー(※カラドリウス/RR/シベリアン/Blood Demon)で動かせれば良かったんだけど。Hanzoはバトれれば良かっただろうしSortに恩があったからSortを立ててたんじゃないかな。そういうとこロシア人っぽい。Eveって面白いんだよね。いろんな人と話してるとその人のバックグラウンドが見えて」
neplus「(DARKNESS.には)FCが『何かしよう』って言った時に否定されやすい風土があって。で、意見分かれてる件で失敗したとするとむっちゃ怒られる。FCなんだから成功する時も失敗する時もあるんだけど……それで仕事を任せられる優秀なFCがどんどんやめていった」
Dexsar「ちょっと前の主要メンバーがほぼみんな居なくなってるんだよね」
neplus「ただその代わりHanzoやDrone Wang(※RRのFC)みたいな、DARKNESS.に縛られないFCが台頭したって面もあるかな。保守的なDARKのFC陣と自由な他アライアンスのFCと、って」
――最後に、未プレイや初心者の方に何か一言。
Dexsar「未プレイや初心者の人がEveについて情報収集する時は、ミスリードを誘うような話が多いからソースに注意するべきってことかな。こないだも●ga●e●のよくわかんない記事とかあったし……」
neplus「Eveで一番強力な船はfriendshipとよく言われます。カラドリはヌル全体で見てもそんな大きな所では無いけれど、外交の力で自分たちなりに楽しくやれています」
neplus「小さいところだから、なんでも自分たちでやらなくちゃならないけれど、そういう艦隊戦以外の部分にも興味があるならウチに来てください。楽しみにしています」
――ありがとうございました。